鳴禽類

鳴禽類は例えば雀やカナリアなどの鳥類で,二種類の音声で鳴く. 一つは地鳴きといい,警戒音など生まれつき発生することができる音声がある. 二つ目はソングといい,複数の音がある規則に従って連なる音声のことをいう. 求愛や縄張り争いに使われ,幼鳥期に会得する.幼鳥期は歌を学習する必要があるが,それは二段階に分かれている. 最初は感覚学習期といい,お手本となる歌を聴いて自信の記憶を形成する. 次に感覚運動学習期では,その歌を実現しようと練習する. 人間と同じで自分の発声とそのフィードバックを得て修正を繰り返しながら発声を練習する. ジュウシマツとコシジロキンパラはその学習過程でよく比較されるが,ジュウシマツとコシジロキンパラはその文法学習に差がある. ジュウシマツは音素を複雑に構成して歌を形成する. しかしその歌は規則性があるわけではなく,音素を組み替えて歌うことができる. 一方でコシジロは規則的な・単調な歌しか歌えない. これは里親を変更したときは両鳥ともに単調な歌しか歌えなかったので,ジュウシマツにしか学習能力がないことがわかる. 一方で,鳴禽類以外の鳥は内耳を切除しても普段通りの鳴き声を実現したものもある. そのため,学習せずに遺伝子的に鳴く鳥もある

フクロウ

フクロウは当然夜行性なので,優れた視覚と聴覚をもつ.そのために音源定位が必要. 例えばメンフクロウは音の方向に対して顔を向ける性質があるが,これを利用してメンフクロウの 音源定位を調査できる. これを利用するとフクロウの音源定位は人間よりも精度がよく,数度でわかるらしい.すご
フクロウの音源定位のよさは耳の位置による.特にメンフクロウは左耳が右耳よりも高い位置にあり, 左耳は下向きに,右耳は上向きについている.

歌学習

鳴禽類がどのように歌を学習するかは発達過程における環境要因が影響している. 例えば聴覚を除去した鳥は不明瞭かつ不安定な歌を歌う. 一方で,周囲の環境から完全に隔離した鳥類はまったく音素が特徴的な歌を歌うようになる. これ以外にも,遺伝子的な要因で周波数が変化したり,スピーカから学ぶか,成鳥から学ぶかでも変化する. (成鳥の方が精度がよく,コミュニケーションが重要であるといえる.)
鳥類が歌を学ぶ理由はいくつかあるが,主にシグネチャーと求愛である. 歌は土地や育ちによって完全に違うため,そのテリトリーにいた個体であること(侵入者でないこと)の証明として歌を学習し,歌う. このときにオスは,その個体・テリトリーに特有の歌を学ぶのではなく,普遍的な歌を学ぶ必要がある. (付近の歌の規則はよく似ている.) 鳥類はたしかに自分のなわばりの歌を認知することが知られていて, 持ち主のオスがいなくなるとそのなわばりが失われてしまうらしい. また,求愛の際にも歌は重要である. メスは新規性のある歌は好まず,自分のテリトリーに似通った歌を好む傾向にある. ただし,全く違う歌や全く同じ歌は好まず,適応的淘汰に対応した選好がされている. また,メスは「モノマネ」を識別することができる. つまり,多種が真似したソングをそれと認識することができる.
幼鳥を教える際には成鳥は要素をいつもよりも長く歌うらしい. けっこう高度な社会を構築しているように見える.すごいな
鳥類がソングをどのように判別しているかは議論されている. 例えばシジュウカラは,違うソングを聞かせるとその鳴き声が変化することが分かっている. しかし,シジュウカラに馴化や脱馴化はみられない. そのため,どのようにソングを識別しているのか,という点についてはまだ議論されている.

歌の意味

前述のとおり,鳥類における歌はテリトリーの主張や,求愛に使われる. そのためか,メスは歌うことができず,オスだけが歌うことができる. ただしカナリアはメスでも歌い,投薬によってオスほど鳴くことが知られている.
ところで,歌には方言があることが知られている. 大陸では数十キロごとに歌に変化がある.同じ周波数でも規則性が違ったり, 周波数さえ違うこともある. 日本でも同じような現象が見られ,本土と島嶼や島嶼ごとに方言のような差異がみられる. これには環境の変化などが理由に上がる. 例えば,本土は季節ごとにそのなわばりを移動するため,その頻度が多いが, 島嶼の鳥は季節的な移動がないため,なわばり争いの頻度も少ない. また,本土は繁殖失敗の要素が多く(敵の存在),性淘汰に対する圧力が大きいが, 島嶼はそうではない. あるいは,どんな種類の鳥類がいるか,ということも方言を生み出している. 例えば自分のソングに似た鳥類が周りにいると,不必要な争いに巻き込まれる可能性がある. そこで,方言的にソングを変えることでこうした争いを減らしている. こうした理由が地域差を生み出していると考えられている. このような方言が種別化を生み出すことがあるか,という点は議論されているらしい. おもろ
方言とは関係なく,鳥類はその環境に応じてその鳴き声を適応させる. 例えば騒音がうるさい都市では,そのソングの周波数・音圧・鳴く時間を適応させることが知られている. また,森林では低周波が減衰されにくいため,森林にすむ鳥は低周波の純音を使用する傾向にある.
加齢によって歌は変化する. 経験を重ねるにつれて,歌学習をする鳥類は歌のれぱーとりーが増えたり, 周波数幅や速度の上昇などがみられる.こういった要素からメスはオスの年齢を指標とする. 一方で,加齢によって歌の速度や周波数幅が減少する種別もみられる. こういった歌の加齢による変化は,ないと考えられていた. 幼鳥期のみに歌学習がおこるからである. しかし,こうした加齢によって歌が変化することは減少として確認されており, こうした可塑性がどれほどあるのか,コミュニケーションや社会にどのような 影響を及ぼしているのか,などはほとんどわかっていないらしい.
ところで歌はメスも歌うことがある. 具体的にはデュエットである.メスとオスでデュエットを組むことで, その絆の形成や,個体識別に使われる.それだけでなく, メスが自分の繁殖アピールのために鳴くこともある.

鳥類の耳

鳥類にとって聴覚は,エサ取りやエコーロケーションなど重要な役割を果たしている. 彼らの耳の構造はほとんど哺乳類と同様で,外耳・中耳・内耳から構成されている. 人間と違う部分のひとつは耳介がないところで,代わりに耳羽が生えている. これは,常に開いている耳を守る役割と,集音の役割を果たしている. 特にフクロウは,顔周りの羽がパラボラアンテナのような役割を果たしている. 中耳や内耳・蝸牛の役割はほとんど人間と同じだが,違う点の一つに, 有毛細胞が再生する,ということがある. 人間の有毛細胞は,騒音や老衰によって失われると二度と再生しなくなるが, 鳥類の場合は有毛細胞に隣接する「支持細胞」が分化転換することができる. 特に損傷をうけなくても自然に再生するようにできており,老衰によって 聴覚が衰えることもないらしい.

非発声音

人間と同じように,鳴管を使ったソングだけでなく,拍手のように体を使って 音を出すこともある. 例えばトリニダード・トバゴにいるハチドリは,飛翔する際に「ブーン」という 音をだす. その羽ばたきは 50 回/s と言われていて,めちゃ速い. この飛翔音は求愛にも使われていて,特に音を出すために進化したといわれている. また,ヤシオウムは,止まり木に枝や木の実を打ち付けて音を鳴らし, 自分のリズムを刻む習性もある. メスに自分の繁殖場所を知らせること・繁殖のモチベーションを知らせることが理由らしい.

コンタクトコール

鳥や哺乳類が,複数の個体の中から特定の個体を見つけるためにつかう 鳴き声をコンタクトコールという. 例えばハシブトガラスは Kah というコンタクトコールをもつが, その音響特性は明確に個体差がある. また,コウテイペンギンは採餌のあとに,大群の中から自分の親やつがいを探す必要がある. こうしたときにコンタクトコールを用いる. 具体的にはコウテイペンギンには鳴管が二つあり,これから発せられる音が うなりをおこすことで個体差が生まれる. このように鳴き声が個体によって変化することは知られているが, 必ずしもこれが個体識別に使われているとは限らない. 例えばミーアキャットは個体によって鳴き声に差があるが, これが個体識別に使われていることは確認できていない.

警戒音

警戒音は,侵入者や捕食者を発見したときに,それを周囲に伝達する音声信号のこと. その周波数は捕食者に特定されにくいが,自身では特定できる必要がある. この警戒音は一定でなく,天敵の種類や行動によって変化することが知られている. 群れの仲間もこれをきちんと識別できている. たしかに天敵の種類によって回避行動を選択する必要があるしな,すごい.
この警戒音はかならずしも同種とは限らない. つまり,別種の警戒音を聞いて回避行動をすることもできる. 加えて,鳥類と哺乳類感など,類を越えた警戒音の盗聴も行われる. 一方で,偽の盗聴音を使って利益を得る手段もある.例えば, クロオウチュウという鳥は,ミーアキャットが獲物を得たことを確認すると, 偽の警戒音を出し,手放した獲物を自分のものにする. もちろんミーアキャットはその偽の警戒音に馴化するので, いろんな種類の警戒音を(多種・他類)出す. これを偽りの警戒音という.

音楽の認識

人間と同じように,鳴禽類は歌を歌うことがある. この類似点はピッチや感覚,音色や強弱の変化である. 一方で,例えば鳥はピッチの変化を認識することができない. つまり人間は,ピッチを変化させても同じ曲だと認識することができるが, 鳥にはそれができない. 一方で,鳥は音楽のジャンルを識別できることが知られている. 具体的には,ジャンルによって止まる木を変えるよう訓練したところ, 学習済みの歌はもちろん,新しく聞いた歌も識別することができる. また,鳥には感性強化を示す類と示さないものがある. 例えばハトは感性強化を示さないが,ブンチョウは感性強化を示さない. チンパンジーやラットでは感性強化を示さず,ヒトとブンチョウのみに限られている.

アレックス

ヨウムのアレックスは心理学史に名前が残る動物のひとりである. アレックスはモノマネによって人の単語を学習した. これは「これはなに?」という問題に対して「xxx」と答えるようなモデルであり, 人間とのコミュニケーションによってたくさんの言葉を覚えた. それだけでなく,物体の属性についても正しく答えることができた. つまり,ものの色や個数にも対応し,ときおりゼロの概念も理解した. 対象の永続性や比較もできたらしい.